この記事では第2種動物取扱業者が護るべき動物の管理方法における義務について紹介します。
管理方法が定められている目的としては、次のように法律上規定されています。
- 動物の健康及び安全を保持すると共に、生活環境の保全上の支障が生ずることを防止するため。
この目的の達成を資するための基準として、次の四つの項目が設定されています。
- 飼養施設の管理
- 飼養施設およびそれに備える設備の構造及び規模
- 設備の管理
- 動物の管理
それでは、内容を順番に確認していきましょう。
- 1.飼養施設は次に掲げる設備を備えていなければいけません。
- 2.使用施設は必要に応じて排水設備、洗浄設備、廃棄物の集積設備及び空調設備を備えるよう努めること。
- 3.必要に応じて空気清浄機、脱臭装置、汚物用の密閉容器等を備えること。
- 4.ネズミ、ハエ、蚊、ノミなどの侵入の防止、または駆除を行うための設備を備えること。
- 5.飼養施設及び設備は、動物の種類や事業の内容及び実施方法に適した構造・規模であること。
- 6.使用施設の床、内壁、天井及び附属設備は清掃が容易である等、衛生状態の維持及び管理がしやすい構造とするよう努めること。
- 7.飼養施設は、動物に応じて、その逸走を防止することができる構造及び強度とすること。
- 8.飼養施設は、作業の実施に必要な空間を加工していること。
- 9.飼養設備の構造、規模が取り扱う動物の種類及び数に鑑み著しく不適切なものでないこと。
- 10.ケージ等は、次に掲げるとすること。
- 11.ケージ及び訓練場は、動物が傷害等を受ける恐れがないよう安全な構造および材質とすること。
- 12.ケージおよび訓練場の床内壁天井及び附属設備は清掃が容易である等、衛生状態の維持及び管理がしやすい構造・材質とするよう努めること。
- 13.ケージ及び訓練場は動物の種類に応じて逸走を防止できる構造および強度とすること。
飼養施設の管理
次の7つの規定が設定されています。
1.建物と土地について事業の実施に必要な権限を有すること。
これは届出申請の時にも確認されますが自己所有であるか、借上げである場合は、持ち主が事業への使用を承諾している必要があります。
2.定期的な清掃及び消毒を行うことにより、衛生管理及び周辺の生活環境の保全に支障が生じないように清潔に保つこと。
定期的ですから、頻度や方法についてマニュアルを作り、実施していくべきでしょう。
3.1日1回以上の巡回を行い、保守点検を行うこと。
これも同様に頻度や方法について、マニュアルを作り、実施しましょう。
4.清掃、消毒、保守点検の実施状況について記録するよう努めること。
監督庁から記録の提出を求められることもあります。
マニュアルとともに実施記録表や点検表を作り、記録を保存しておきましょう。
5.動物の鳴き声、臭気等により周辺の生活環境を著しく損なわないよう、飼養施設の開口部を適切に管理すること。
臭気については清潔に衛生的に保つことで抑制できると考えられますが、鳴き声については、どうにもならない状況もあるかもしれません。
周辺環境を鑑み、取り扱うことのできる動物の種類が限定される可能性もあります。
6.必要に応じて、動物の鳴き声が外部に伝播しにくくするための措置を講じること。
なき癖の治らない、犬の保管のために遮音、吸音設備の整った部屋が必要になるかもしれません。
7.動物の逸走を防止するため、必要な措置を講じること。
フェンスや二重扉などの措置が必要になってくるでしょう。
これらの規定は周辺地域に迷惑をかけないという趣旨の元に規定されているようです。
飼養施設およびそれに備える設備の構造及び規模
次は施設および設備の構造・規模に関するもので、いわゆるハードに関する規定です。
次の13項目が規定されています。
1.飼養施設は次に掲げる設備を備えていなければいけません。
- ケージ類
- 給水設備
- 消毒設備
- 餌の保管設備
- 清掃設備
- 遮光のため、または風雨を遮るための設備
- 訓練場(動物の訓練を事業として行う場合)
上記が必要最低限の設備と言えるものです。
2.使用施設は必要に応じて排水設備、洗浄設備、廃棄物の集積設備及び空調設備を備えるよう努めること。
これらはある程度の規模になると必要になってくるものと思われます。
3.必要に応じて空気清浄機、脱臭装置、汚物用の密閉容器等を備えること。
住宅密集地で事業を行う場合などは、動物の臭いや毛の拡散が、わずかなものであっても問題になる可能性があります。
問題になる前に対応しましょう。
4.ネズミ、ハエ、蚊、ノミなどの侵入の防止、または駆除を行うための設備を備えること。
これらは病気を運ぶ可能性のあるものです。
施設内の動物だけでなく、周辺地毛の影響も大きくなる可能性がありますので、しっかり対応しなければいけません。
5.飼養施設及び設備は、動物の種類や事業の内容及び実施方法に適した構造・規模であること。
抽象的な内容ですが、例えば爬虫類や魚類を飼養する場合には、当然それに適した施設や設備が必要になりますし、保管と展示では異なる施設や設備が必要になります。
6.使用施設の床、内壁、天井及び附属設備は清掃が容易である等、衛生状態の維持及び管理がしやすい構造とするよう努めること。
例えば、あまりにも見た目にこだわって装飾を施したりするより、より実用的である方が望ましいということでしょう。
また、その方がより効率的に業務を行うことができると考えられます。
7.飼養施設は、動物に応じて、その逸走を防止することができる構造及び強度とすること。
例えば犬には犬の、鳥には鳥の、蛇には蛇の、それぞれ対応した構造や強度が必要になってきます。
8.飼養施設は、作業の実施に必要な空間を加工していること。
動物のためだけのスペースではなく、人間が作業するためのスペースも必要です。
9.飼養設備の構造、規模が取り扱う動物の種類及び数に鑑み著しく不適切なものでないこと。
この基準も抽象的で、今までのものと重なるところもありますが、例えば、無理をして数を増やしたりすると、不適切な状態になる可能性があります。
10.ケージ等は、次に掲げるとすること。
- 底面は糞尿等が漏えいしない構造であること
- 側面及び天井は常時、通気が確保され、かつケージ等の内部を外部から見通すことができる構造であること
- 飼養施設の床等に確実に固定する等、奨学金より転倒を防止するための措置が講じられていること
- 動物によって容易に損壊されない構造・強度であること
- 個々の動物が自然な状態で日常的な動作を容易に行うための十分な広さおよび空間を有するものとすること
また使用期間が長期間にわたる場合によっては必要に応じて運動ができるようにより1層の広さ及び空間を有するものとすること。
11.ケージ及び訓練場は、動物が傷害等を受ける恐れがないよう安全な構造および材質とすること。
例えば、突起物、穴、斜面、くぼみなどに気を配り、必要があれば形状の変更などで対応しましょう。
12.ケージおよび訓練場の床内壁天井及び附属設備は清掃が容易である等、衛生状態の維持及び管理がしやすい構造・材質とするよう努めること。
施設と同様に、動物の安全性だけでなく、人間の作業性も考慮しましょう。
13.ケージ及び訓練場は動物の種類に応じて逸走を防止できる構造および強度とすること。
設備の管理
使用施設に備える設備の管理規定として、次の6項目が挙げられています。
1.ケージ等に、給餌、給水のための器具を備えること。
2.ケージ等に、動物に適した遊具、泊まり木、砂場、水浴び、休息等ができる設備を備えるよう努めること。
3.ケージ等の清掃を1日1回以上行い、残差、汚物等を適切に処理すること。
4.ケージ等に、糞尿の受け皿等を備えること。
5.保管業もしくは訓練業を行う場合は、動物を搬出するたびにケージ等の清掃及び消毒を行うこと。
6.動物の逸走を防止するため、ケージ及び訓練場に必要に応じて成長設備を備えること。
ここの項目は動物の健康管理を目的とするものになっていると思われます。
マニュアルを作成し、記録を残し、管理する必要があるでしょう。
動物の管理
最後の項目です。
第2種動物取扱業者が護るべき動物の管理方法における義務の目的のひとつが、動物の健康及び安全を保持することですので、この項目は非常に重要なものと思われます。
分量的にも全体の半分以上を占めており、次の通り、7項目が挙げられてます。
- 動物の飼養又は保管について
- 使用施設における動物の疾病等に係る措置について
- 動物の繁殖について
- 動物の輸送について
- 動物の見物客等との接触について
- 動物の譲り渡し、又は貸出について
- その他、動物の管理について
順番に詳細を確認していきましょう。
1.動物の飼養又は保管について
- 職員数と施設の構造、規模は、動物の種類及び数に見合ったものであること。
色々な業界で問題となっている、「ワンオペ」などは論外ですね。 - ケージ等の外で、飼養または保管しないこと。
- ケージ等の構造および種類は、動物の種類及び数に見合ったものであること。
- 異種または複数の動物の飼養又は保管をする場合には、ケージ等内に入れる動物の組み合わせを考慮すること。
- 幼齢な犬猫等の社会化を必要とする動物については、適切な期間、親兄弟姉妹等と共に飼養又は保管をするよう努めること。
(社会化というのは、その種特有の社会行動様式を身につけ、家庭動物、展示動物等として周囲の生活環境に適応した行動が取られるようになることを言います。) - 動物の生態に適した環境が確保され、また、騒音防止されるよう、飼養環境の管理を行うこと。
- 動物に応じて餌の種類、量、回数を適切なものとすること。
- ケージ内で運動が困難である場合には、ストレス低減のために必要に応じて運動の時間を受けること。
- 展示業を行う場合には、動物のストレスを軽減するため、長時間の展示においては、必要に応じて途中に展示を行わない時間を設けるよう努めること。
- 展示場や訓練業を行う場合、動物に演芸させ又は訓練をする場合、それが過酷なものとならないようにすること。
- 1日1回以上動物の数および状態を確認すること。
- 動物の死体を速やかにかつ適切に処理すること。
- 動物の鳴き声、臭気等や他の衛生動物により周囲の生活環境を著しく損なわないようにすること。
- 動物の逸走時に備え、必要に応じ捕獲体制の整備、固体識別の実施等の措置を講じること。
- 天地行展示業及び貸出業を行う場合、野生由来の動物の場合では飼養可能性を考慮して適切な種を選択すること。また必要に応じた、馴化措置を講じること。
- 飼養、保管する動物の管理に係る責任者を選任するよう努めること。
2.使用施設における動物の疾病等に係る措置について
次の五項目が規定されています。
- 新しく動物を飼養施設へ導入する場合は、健康であることを目視または導入に係る契約の相手方から聞き取りにより確認し、必要に応じて他の動物と接触させないように努めること。
予防接種を受けているかどうか、またこれまでの病歴など確認しておいた方がいいでしょう。 - 動物の疾病及び傷害の予防、寄生虫の寄生の予防または駆除等日常的な健康管理を行うこと。
- 必要に応じてワクチン接種を行うよう努めること。
- 動物が疾病にかかった場合には、速やかに必要な措置を行うとともに、必要に応じて、獣医師による診療を受けさせること。
- 衛生動物による健康被害を受けないよう、その発生侵入の防止、または駆除を行うこと。
3.動物の繁殖について
次の二項目が設定されています。
- 貸出業及び展示業を行う場合、動物を繁殖させる場合には、遺伝性疾患等の問題を生じさせる恐れのある動物等を繁殖させないこと。
- 貸出業及び展示業を行う場合、動物を繁殖させる場合はみだりに繁殖させることを避け、繁殖の回数を適切なものとして、必要に応じ制限するための措置を講じること
4.動物の輸送について
次の六項目が規定されています。
- 輸送設備は衝撃による転倒を防止するような構造になっていること。
- 輸送設備は定期的な清掃、消毒により清潔に保つこと。
- 輸送設備に、動物に適した環境が確保されるよう、必要に応じて空調設備を整えるよう努めること。
- 動物の種類や状態に応じ、輸送中は餌の種類、量、回数を適切なものとすること。
- 動物の疲労、苦痛を軽減するため、輸送時間はできる限り短くし、必要に応じて休息時間を確保すること。
- 衛生管理、逸走の防止並びに周辺の生活環境の保全に必要な措置を講じること。
5.動物の見物客等との接触について
次の二つの項目が規定されています。
- 貸出業、展示業を行う場合、見物客が動物に接触する場合には、動物に過度なストレスがかからないよう、また見物客の安全のため見物客に対して、動物園の接触方法について指導するとともに、動物に適度な休息を与えること。
- 貸出業展示業を行う場合、動物の健康保持するため、見物客が動物にみだりに食物を与えることがないよう必要な措置を講じるよう努めること。
6.動物の譲り渡し、又は貸出について
次の四項目が規定されています。
- 譲渡業者にあっては、可能な限りある程度成長して成体が食べるエサと同様のエサを自力で食べることができるようになった動物を譲り渡しするよう努めること。
- 譲渡業者及び貸出業を行う場合、可能な限り養育環境の変化及び輸送に対して十分な耐性が備わった動物を譲渡、貸出するよう努めること。
- 譲渡業者は譲り渡し先に対して次の情報を譲り渡し先に対して説明するよう努めること
・成熟時の標準体重、標準体長、その他体の大きさに係る情報
・平均寿命その他の飼養期間に係る情報
・人と動物の共通感染症や当該動物がかかる恐る高い疾病の種類及び予防方法
・不妊または去勢の措置の方法およびその費用(哺乳類のみ)
・不妊・去勢の他、みだりな繁殖を制限するための措置
・性別
・生年月日
・不妊又は去勢の措置の実施状況(哺乳類のみ)
・病歴、ワクチンの接種状況
・その他、動物の適正な飼養又は他に必要な事項 - 貸出業の場合、貸出先に対して次の事項を説明するよう努めること
・人と動物の共通感染症、その他の動物がかかる恐れの高い疾病の種類及びその予防方法
・性別
・生年月日
・病歴、ワクチンの接種状況
・不妊・去勢措置を実施状況(哺乳類のみ)
・その他、適正な飼養又は保管に必要な事項
7.その他、動物の管理について
次の五項目が規定されています。
- 事業の廃止等により、飼養・保管を継続することが困難困難な状況になった場合には、動物が命あるものであることを鑑み、譲渡し等よって生存の機会を与えるよう努めること。
- 病気の回復の見込みがない場合など、止むを得ず動物を殺処分しなければならない場合には、できる限り苦痛を与えない方法によること。
- 毒を有する動物の飼養又は保管をする場合には、抗毒素血清等の救急用品を備え、また医師による迅速な救急処置が行える体制を整理すること。
- 災害時の対応のため、平時より職員間の連絡体制、動物の逸走時の捕獲体制の整備、動物の避難方法、餌の備蓄等の対策を講じること
- 動物の数が増減した場合には、その状況について記録した台帳を調整し、5年間保管すること。
以上が第2種動物取扱業者が動物の管理方法の遵守すべき義務でした。
これらの規定は定量的ではなく、定性的なものが多く、また個々の現場に応じて状況も異なるでしょうから、判断に迷うこともあるかもしれません。
人と動物が共存していく上で、「人のため」と「動物のため」は決して矛盾するものではないと思います。
動物取り扱い業においては、「動物のため」が「人のため」に繋がるのではないかと思います。
判断に迷った時には、「動物のため」をまず考えればいいのではないでしょうか。