【建設業】令和2年10月施行法改正で経営業務管理責任者要件の緩和

この記事では、改正建設業法が令和2年(2020年)10月に施行されることに対応した建設業法施行規則の改正案における経営業務管理責任者の要件緩和について解説しています。

令和2年5月13日から建設業法施行規則の改正案に対するパブリックコメントが開始されており、同年6月公布、10月1日施行ということになっています。

元来、経営業務管理責任者要件は厳しすぎるという意見が多く、今回の法改正に対して、期待をしていた方も多かったのではないかと思います。

実際には、まだ具体的な運用が示されていないため不明な点はありますが、次のように言えると思います。

確かに用件は緩和され、いままでの基準では、経営業務管理責任者とみなされなかった人が、要件を満足するようになりうることもあります。すなわち、経営業務管理責任者要件のため許可を取ることができなかった事業者が許可を受けることが出来るようになる場合があると言えます。
ただし、許可申請手続き上の煩雑さは改善するどころか、より悪化する可能性があります。
それでは内容を詳しく見ていきましょう。

改正案の経営業務管理責任者要件

国土交通省によると、建設業法の改正により事業者全体として適切な経営管理責任体制を有しているかどうかを判断するとみなおしたことを踏まえ、適切と認められる体制を規定したとのことです。

つまり、経営者個人としてではなく、事業者全体として、という観点でこの経営業務管理責任者要件を見直すということのようです。

大枠としては次のような内容になります。

その会社で5年以上の財務管理、労務管理、業務運営のいずれか(兼務可)に携わっているものを補佐として配置することで、経営を担う常勤役員に求める経験を緩和する。

ということは、経営業務管理責任者の要件は緩和されるがその代わりに「補佐」するものの要件が追加されるということになるというように読み取れます。

緩和される内容としては、次のような内容です。

  • 建設業の種類ごとの区分は廃止し、どの種類の経験でも認められる。
  • 経営業務が、財務管理、労務管理、業務運営のいずれかでよい
  • ただし、上記の場合は、一定の経験を有する補佐が必要

より具体的に、国土交通省から出されている施行規則の改正案は次のようなものです。

 

適切な経営能力を有する者として、下記(イ)または(ロ)のいずれかの体制を有する者であること。

(イ)常勤役員のうち1人が下記(a1)、(a2)または(a3)のいずれかの体制を有する者であること。

(a1)建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者

(a2)建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にあるものとして5年以上経営業務を管理した経験を有する者

(a3)建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にあるものとして6年以上経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者

(ロ)常勤役員等のうち1人が下記の(b1)または(b2)のいずれかに該当するものであって、かつ、当該常勤役員等炉直接補佐するものとして、下記の(c1)、(c2)及び(c3)に該当するものをそれぞれ置くものであること。

(b1)建設業の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務に関し、建設業の役員等の経験二年以上を含む5年以上の建設業の役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位における経験を有する者

(b2)建設業の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務に関し、建設業の役員等の経験二年以上を含む5年以上の役員等の経験を有する者

(c1)許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有する者

(c2)許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有する者

(c3)許可申請等を行う建設業者等において5年以上の運営業務の経験を有する者

(a1)(a2)(a3)を見ると、建設業の業種は問われない、ということが分かります。

(b1)(b2)はわかりにくいですが、建設業の役員の2年の経験があれば、他の事業の役員の経験でもトータル5年あればよいということになり、その場合には(c1)(c2)(c3)の補佐が必要ということになります。

従前の個人の経験から複数人の経験に分散された感じです。

個人としての要件は緩和されてはいますが、全体としては、緩和されているとは言い難く、許可申請の手続き上の書類の収集、作成の手間はもしかすると増えるかもしれません。

ちょっと期待外れといえなくもないですが、実際の運用がどうなるかもう少し待つ必要があります。

とはいえ、確実に用件は緩和されています。手続き上の手間はしょうがないですが、門戸は開かれていく方向にあると言っていいのではないでしょうか。

建設業界としてはこの流れが逆流しないように、要件が緩和されたからといって、それに甘んじることなく自らを律するつもりでいた方がいいのではないかと思います。

万が一、経営者の責任、管理不足等で大きな事故が発生すれば、逆に規制が強化されることもあるかもしれませんから。

 

以下に現状の経営業務管理責任者の要件とその証明するための確認資料をあげておきます。ご確認ください。

現行の経営業務管理責任者要件

建設業許可を受けるための現行の経営業務管理責任者の要件をまとめると次のようになります。
  1. 許可を受けようとする建設業に関し、5年以上取締役や執行役員(管理者に準ずる地位)としての経験を有する者
  2. 許可を受けようとする建設業以外の建設業に関し、6年以上取締役及び執行役員等(管理者に準ずる地位)としての経験を有する者
  3. 許可を受けようとする建設業に関し、6年以上経営業務を補佐した経験を有する者
  4. その他、国土交通大臣が個別の申請に基づき認めたもの

4.はちょっと特殊で、海外企業で経営者としての経験がある場合で、ここでは詳しい解説は省きます。

上記のような経営業務管理責任者としての経験を証明するための資料としては、次のようなものが必要とされています。

 

個人事業主での経験の場合(次の1~4のいずれか又は組み合わせ)

  1. 許可通知書
  2. 職業欄に経験業種の記載のある所得税の確定申告書
  3. 経験業種の工事であることが確認できる契約書、注文書
  4. 2または3が提出できないときは、発注証明書(所定様式)

※1のみのよる場合は必要期間分が必要で、2.3.又は4.もしくは1.から4.の組み合わせによる場合は、必要年数5年の場合は直近の1,3,5年のもの、必要年数6年の場合は直近の1,3,5,6年のものが必要です。

 

法人の常勤役員での経験の場合(次の1および2)

  1. 必要年数分の役員経験が確認できる登記事項証明書
  2. 次のいずれか又は組み合わせによる
    ア.許可通知書
    イ.事業種目欄に経験業種の記載のある法人税の確定申告書の写し
    ウ.経験業種の工事であることが確認できる契約書、注文書
    エ.イ又はウが提出できない場合は、発注証明書(所定様式)

※アのみによる場合は必要期間分。イ、ウ又はエのみもしくはア~エの組み合わせによる場合は、必要年数5年の場合は直近の1,3,5年のもの、必要年数6年の場合は直近の1,3,5,6年のものが必要です。

 

個人の支配人での経験の場合(次の1及び2)

  1. 「支配人登記」の登記事項証明書
  2. (個人事業主の経験に準じる)

 

支店又は営業所の長での経験の場合

  1. 建設業法上の営業所の長の経験の場合
    ア.建設業許可申請書
    イ.建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表
    ※必要経験期間の経験が確認できるものであること
  2. 1以外の営業所の長の経験の場合
    経験業種の契約締結権限を持つ営業所の長であることが確認できる契約書や注文書
    ※必要年数5年の場合は直近の1,3,5年のもの、必要年数6年の場合は直近の1,3,5,6年のものが必要です。

 

上記は経営業務管理責任者としての経験を証明するための書類ですが、準ずる地位にあって執行役員としての経営管理経験や補佐経験の場合の確認資料についてはさらにややこしく、各都道府県等の許可行政庁によって異なる場合があり、個別に確認が必要です。