【建設業】特定建設業許可における財産的基礎要件について

この記事では、特定建設業許可における財産的基礎要件について、その概要を紹介します。

特定建設業許可における財産的基礎要件については、一般建設業許可の財産的基礎要件よりも非常に厳しい基準になっています。

法律では以下のとおり規定されています。

発注者との間の請負契約でその請負代金の額が8000万円以上であるものを履行するに足りる財産的基礎を有すること。

8000万円以上の工事には、材料費や従業員の給料など長期にわたり高額の資金が必要となってきます。

具体的には次の三点の基準をすべて満たす場合、倒産することが明白である場合を除き、財産的基礎要件を満たしていると取り扱われます。

  • 欠損の額が資本金額の20%を超えていないこと
  • 流動比率が75%以上であること
  • 資本金の額2000万円以上であり、かつ自己資本の額が4000万円以上であること

自尚上記の基準を満たしているかどうかの判断は、原則として、既存の起業の場合は申請時の直前の決算期の財務諸表により行われ、新設企業の場合は、創業時財務諸表により行われることになります。

一つずつ内容を見ていきましょう。

欠損の額が資本金額の20%を超えていないこと

欠損の額というのは、法人の場合は以下のようなものです。

貸借対照表の繰越利益剰余金が負である場合には、その額が資本剰余金、利益準備金及び任意積立金の合計額を上回る額のことです。
貸借対照表の純資産の部において、資本金を除いた部分がマイナスになっている場合でしょう。

個人の場合は次のようなものです。

事業主損失が事業主貸勘定から事業主借勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額を上回る額のことです。

乱暴な言い方をすると、累積赤字が資本金の20%を超えないことが条件となっているちいえるでしょう。

流動比率が75%以上であること

流動比率とは、流動資産と流動負債の比率のことで、次のようにあらわされます。

流動資産÷流動負債×100(%)

念のため、流動資産、流動負債について説明しておきます。

流動資産とは次のようなものです。

営業の中で発生した資産で、1年以内に換金可能な資産のこと。
大きく分けると、当座資産、棚卸資産、その他流動資産に分けられる。
・当座資産:現金、預金、売掛金、受取手形、有価証券等
・棚卸資産:いわゆる在庫のこと。売れば、換金できるもの
・その他流動資産:当座資産、棚卸資産の両方に含まれない資産で、例えば、短期貸付金や未収金などが挙げられます。

流動負債とは次のようなものです。

同じく営業の中で発生した債務で、1年以内に支払いの期限が到達する債務のことです。
主な勘定科目でいえば、次のようなものです。
・買掛金
・支払手形
・短期借入金
・未払い金
・前受金

結局のところ、流動比率から、会社の支払いの能力を判断することができます。
流動比率が高ければ支払い能力が高く、低ければ、支払いの雨量が悪いということになります。
理想的には200%、現実的には150%程度といわれますが、70%という数字は、いい物とは言えない数字です。

資本金の額2000万円以上であり、かつ自己資本の額が4000万円以上であること

資本金とは、法人の場合、株式会社の払込資本金、持分会社等の出資金額のことで、個人事業にあっては、期首資本金のことです。

自己資本というのは、法人の場合は貸借対照表における純資産合計の金額のことです。

個人の場合は期首資本金、事業主貸勘定及び事業主利益の合計額から、事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額のことです。

 

上記の財産的基礎要件に関しては、許可を行う際に判断するもので、許可をした後にこの基準の適合しないこととなっていたとしても、直ちに許可の効力に影響を及ぼすものではないとされています。

つまり新規に許可を受けて、五年後の更新までの間は財産的基礎要件は考慮されないということです。

しかしながら、特定建設業許可の場合には、その趣旨から下請けの保護が目的であるということを鑑みて、日頃から財産的基礎要件に気くばりをしておくべきでしょう。

少なくとも決算時には特定建設業許可の要件を満たしているかどうか確認し、万一に満たしていないならば、何らかの措置を講じることを考えなければいけません。

許可の更新の時期になって、あわてて財務諸表を見直すなどということは避けたいですね。