この記事では、農地法第3条(農地の権利移動や賃貸借当)に掛かる許可基準についてその詳細を紹介します。
農地法では、農地についての権利を移動させるときには、各市町村の農業委員会の許可を受けなければならないと規定されています。
法律では、条件に該当する場合は許可できない、すなわち不許可基準が定められています。
法律の文言は堅苦しく、わかりにくいので、なるべく平易な文章で紹介したいと思います。
■農地を効率的に利用し、耕作の事業を行うこと
農地の権利を得ようとしている本人またはその家族等(世帯員といいます)が、すべての農地について、効率的に利用して、耕作の事業を行うということを農業委員会に認めてもらわなければなりません。
ここで、すべての農地というのは、新たに権利を得るために申請している農地だけではなく、すでに所有している、または賃借、使用貸借している農地も含めた農地です。
したがって、すでに所有している農地の中に耕作放棄地がある場合には、許可できないことになります。
効率的な利用については、必要な機械、労働力を適切に利用するための計画が必要です。
すでに農業を営んでいる場合は過去の実績があるので計画もたやすいでしょう。
しかし、新たに農業に参入する場合は、農業を行うにあたり、必要な人、物、金について証拠を示すことのできる書類が必要です。
■法人の場合、農地所有適格法人であること(農地を所有する場合)
法人が農地を所有する場合、農地所有適格法人でなければなりません。
貸借であれば一般法人でも構いません。
農地所有適格法人の要件として次の4件が挙げられます。
法人形態
法人形態は、株式を公開していない株式会社、農業組合法人、持ち分会社です。会社が農業に携わらない人たちの手に渡らないように、非公開だったり、持ち分会社であることに制限されています。
事業内容
事業内容としては、農業による売り上げが全体の半分を超えることが必要です。農作物の加工、販売などの関連事業も含みます。
議決権
議決権は、その過半数が農業関係者であることが必要です。
役員
役員については、その過半数が農業に常時従事し、役員または重要な使用人の中の一人以上が農作業に従事することが必要です。
これらのことより、農業所有適格法人は、確実に農業に従事することが担保されていなければなりません。
■信託の引受けではないこと
農地信託とは、農地の流動化を推進するために農地保有合理化法人と農業協同組合が離農農家等から農地の売渡信託を引き受け、委託農家への資金貸付を行う制度です。
この制度による農地信託以外は許可が下りません。
新たな権利者が農業に従事するという担保が不明確になるという理由でこの規定が設けられています。
■権利を得るものが常に農作業に従事すること
個人の場合、原則として、農作業に従事する日にちが年間150日以上であることが必要です。法人の場合と同様に、農業に従事することを証明しなければなりません。
■下限面積以上であること
農地取得後の全ての農地の合計が、原則として50アール以上であること、また、北海道の場合は2ヘクタール以上であることが必要です。
しかし、各市町村の地域の実情に合わせて、各農業委員会が引き下げることが可能となっています。
例えば広島県三原市の場合は、以下のとおりです。
沼田東町 | 50アール |
小泉町 | 40アール |
高坂長、小坂町、長谷、沼田、新倉、沼田西町 | 30アール |
西野、大畑町 | 20アール |
上記以外の地域 | 10アール |
自治体ごとに異なるので各市町で確認しなければいけません。
■農地を又貸し、質入れしないこと
3条許可申請の基本原則の一つに双方申請の原則があります。
買い手と売り手、貸し手と借り手が双方で協力して申請しなければなりません。
したがって貸借の場合に又貸しなどで農地を使用する人が変わるようなことがあると双方申請の原則が意味をなさなくなってしまいます。
また、農業に従事するということも確実であるとは言えません。
■周辺地域の農地利用に調和すること
農地取得後に行う農業が、周辺の農地の農業上の効率的、総合的な利用に支障が出ないようにしなければなりません。
例えば、水利調整に参加協力するとか、無農薬栽培が取り組まれている地域では、農薬を使用しないなど地域との協力体制が欠かせません。
単独で好き勝手にやって、周りに影響が出ると農業委員会に判断されれば許可されません。
■賃借、使用貸借の場合の3要件
上記に加えて、貸借の場合には、次のような3つの要件があります。
- 貸借契約書に、農地を適正に利用していない場合には、契約を解除するという条件が契約書に書かれていること。
- 地域の他の農業者と適切に役割分担し継続的、安定的に農業経営を行うと見込まれること。
- 法人の場合、業務を執行する役員等のうち、一人以上が耕作の事業に常時従事すること。
3条許可はとにかく農地の権利を得たものが、上記のように確実に農業に従事すると認められなければなりません。
例えば、転売目的での権利の取得は認められません。
許可が下りたとしても、違法性が認められた場合は厳しい罰則が規定されています。
自分の身を守るためにもルールは守りましょう。