【古物商】ネット仕入れの場合の本人確認について

この記事では、インターネット取引における相手方の身元確認方法について、その詳細を紹介します。

インターネットなどにより取引相手と古物の買い取りなどを行うことを非対面取引といいます。
非対面取引においても取引相手の住所、氏名、年齢、職業を確認しなければなりません。
その時、相手方が申し立てた住所、氏名などが正しいものであるかどうか、なりすましなどではないかなどを確認する必要があります。

そのための措置が法律で規定されています。
怠ると法律違反となり、処罰されることもありますし、万が一、盗品の処分先として利用されてしまった場合、損害を被ることもあります。法令違反としての罰則は6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金という非常に重たいものです。

以下の点を特に注意しなければなりません。

  • 運転免許証などのコピーを送ってもらうだけでは不十分です。
  • 1万円未満であっても18歳未満からの買取でないことを確認する必要があります。
  • 法人相手の取引であっても、法人の取引担当者の住所氏名、年齢、職業確認しなければなりません。
  • 1万円未満の買い受けは確認が免除されていますが、バイク、ゲームソフト、CD、DVD、書籍は対象外ですので身元確認をする必要があります。

特に考えておかなければならないのが、1万円以下のときは身元確認は必要ないが、18歳未満であることだけは確認しなければならないということです。

それでは、法律に規定された身元確認の15の方法を見ていきましょう

1.相手方から電子署名を行ったメールの送信を受ける。

認定認証事業者が証明する電子署名を利用することで、相手方の確認を行う方法です。
これをやってもらえれば楽ですね。

2.相手方から地方公共団体情報システム機構が発行した電子証明書と電子署名を行った住所、氏名、職業及び年齢に係る電磁的記録を提供を受けること。

この電子証明書と電子署名はマイナンバーカードを利用するものです。
この場合、売主側にマイナンバーカード用のカードリーダーが必要であったり、古物商は、総務大臣が認定した署名検証者に限られており、ハードルが高そうです。

3.相手方から特定認証業務を行う署名検証者が発行した電子証明書と電子署名を行なった住所、氏名、職業及び年齢に係る電磁的記録の提供を受けること。

この電子証明書は、マイナンバーカードではなく、民間により発行されたICカード等で行うもので、これも売主側にカードレーダーが必要です。
古物商側は、総務省の認定等は必要ありません。

4.相手方から印鑑登録証明書及び登録した印鑑を押印した書面の送付を受けること。

売主から印鑑証明を送ってもらわなければなりません。
このようなことを対応してくれる人がいるんでしょうか。
そんなめんどくさいことなら売らない、となりそうな気がします。

5.古物商が相手方に対して本人限定受取郵便等を送付してその到達を確かめること、伏せて相手方からその住所、氏名、職業、年齢の申し出を受けなければなりません。

例えば簡易書留等を利用することになります。
売り手に簡易書留で、例えば、受付表等を送り、古物と共に返送してもらうというやり方です。
余分に経費は掛かりますが、比較的ハードルは低そうです。

6.古物商が相手方に対して本人限定受取郵便等によりそ古物の代金を送付する契約を結ぶこと。伏せて相手方からその住所、氏名、職業、年齢の申し出を受けなければなりません。

代金の支払いを本人限定受け取り郵便の現金書留で行う場合です。

7.相手方から住民票の写しの送付を受け、そこに記載された住所宛に簡易書留等を転送しない取扱いで送付して、その到達を確かめること

住民票の写しを快く送ってくれる人がそんなにいるとは思えません。
ちょっと難しいですね。

8.古物商が相手方から住民票の写し等の送付を受け、そこに記載された本人名義の預貯金口座等に古物の代金を入金する契約を結ぶこと。

これも住民票の写しですから、ハードル高そうです。
法人の場合は、取引担当者の住民票の写しと法人の登記事項証明書、取引担当者が法人の取引を担当していることを記載した委任状が必要とされています。
これを対応してもらえるのは特別な取引だけのような気がします。

9.相手方から身分証明書、運転免許証、国民健康保険被保険者証等のコピーの送付を受け、そこに記載された住所宛に簡易書留等を転送しない取扱いで送付して、その到達を確かめ、併せてそのコピーに記載された本人の名義の預貯金口座等に古物の代金を入金する契約を結ぶこと。

例えば、免許書のコピーと品物を送ってもらい、簡易書留等を転送不要として送付し、到達確認し、売り手から口座情報等の連絡をもらい、代金を振り込むという流れです。

10.IDとパスワードの送信を受けること等により、相手方の真偽を確認するための措置を既にとっていることを確かめること。

過去に、本人確認済で、IDとパスワードを付与し、2回目以降の取引です。

11.相手方から運転免許証、国民健康保険被保険者等の異なる身分証明書のコピー2点または身分証明書等のコピー1点と公共料金領収書等(コピーも可)の送付を受け、そこに記載された住所あてに簡易書留等を転送しない取扱いで送付して、その到達を確かめること。

異なる身分証明書が2点必要というのはハードルが高そうです。

12.古物商が提供したソフトウェアにより、相手方から運転免許証等の身分証明書を撮影した画像の送信を受け、そこに記載された住所あてに簡易書留等を転送しない取り扱いで送付して、その到達を確かめること。合わせて相手方からその住所、氏名、職業、年齢の申し出を受けなければなりません。

銀行やクレジット会社のサイトで本人確認する時によくあるタイプですね。

13.相手から運転免許者等のICチップ情報の送信を受け、当該情報に記録された相手方の住所宛に簡易書留等を転送しない取扱いで送付して、その到達を確かめること 併せて相手方からその住所、氏名、職業、年齢の申し出を受けなければなりません。

売り手から、個人情報の入ったICカードを利用するものです。
電子署名を使わなければいけないことになっています。

14.古物商が提供したソフトウェアにより、相手方から容姿を撮影した画像の送信を受け、および運転免許証等の本人確認書類の画像の送信を受けること、合わせて相手方からその住所、氏名、職業、年齢の申し出受けなければなりません。

本人の写真も送ってもらうという方法です。
ビデオ通話や動画でもよいとされています。

15.古物商が提供したソフトウェアにより、相手方から容姿を撮影した画像の送信を受け、及び運転免許証の写真付き身分証明書等のICチップ情報の送信を受けること、合わせて相手方からその住所、氏名、職業、年齢の申し出を受けなければなりません。

13と14を足したようなものです。

 

以上が法律で規定された取引相手の確認方法です。

ヤフオクなどのインターネットオークションサイトで古物を買い受ける場合に上記15種類の中からどれかを選んで相手方の確認をしなければいけません。

可能でしょうか?

どれも難しいように思われます。
しかし、難しそうだからといって、相手方の確認をせず、古物を買い受けるのは違法です。

ヤフオク等の場合は、ヤフオクがユーザー登録時に確認をしているから問題ない、ということも言われていますが、法律上そのような解釈はできそうもありません。
グレーゾーンといわれることもありますが、白でないなら避けるべきです。

どうしてもインターネットを通じて古物の仕入れをしなければいけないようであれば、取引相手に上記のどれかの方法で本人確認する旨連絡を取り、了承受けた相手とのみ、取引をするようにしなければなりません。

見つからなければ大丈夫、とか見つかるわけがない、という気持ちでやっていると、後でしっぺ返しを食らうかもしれません。
気をつけましょうね。