この記事では、一般貨物自動車運送事業の許可を受けるために必要な運行管理者について、その業務内容を紹介します。
運行管理者は一般貨物自動車運送事業者から運行の安全の確保に関する業務を行うために必要な権限を与えられ、誠実にその業務を行わなければなりません。
法律で定められている、運行管理者の業務は、20項目規定されています。(貨物自動車運送事業輸送安全規則第20条)
順番に内容を見ていきましょう。
1.選任された運転者以外の運転を禁止する管理業務
次のような人は専任の運転者にはなれませんので、注意してください。
- 日々雇い入れられる者
- 2か月以内の期間を定めて使用されるもの
- 試用期間中のもの
2.乗務員の休憩、睡眠施設の管理業務
運行管理者は乗員が業務として休憩、又は睡眠仮眠のために利用する施設を常に良好であるように計画的に適切な管理を行わなければなりません。
休憩、睡眠施設は原則として営業所または車庫に併設してある必要があります。
睡眠する場合、1人あたりの広さは2.5平方メートル以上必要です。
寝具等必要な設備を常に快適に使えるように整えておかなければなりません。
3.定められた勤務時間、乗務時間の範囲内で乗務割を作成し、これに従い乗務指示をする業務
運行管理者は乗務員の過労を防止するため、法令で定める基準に従って事業者が定めた、勤務時間および、乗務時間に係る基準に則って乗務時間の設定および乗務調整を行わなければいけません。
乗務割を作成する上での一般的な留意事項の例として、次のようなものが掲げられます。
- 前日の作業終了時間からの休憩時間
- 深夜勤務時間
- 連続運転時間と中間における休憩時間
- 2週間を通じ必ず1回休憩を付与する
- 公休割り当ての作成と周知の徹底
- 長距離運行や夜間運行に際しての交代運転者の配置
- 乗務前点呼で運転者の酒気帯び、および健康状態を把握し酒気帯び、疾病および疲労等による乗務の禁止
4.酒気を帯びた状態にある乗務員の乗務を禁止すること
毎日の点呼において行われるアルコールチェックを運転者任せにし、単に記録を確認するにとどまることなく、運転者の状態を運行管理者自身の眼で確かめ、運行管理者としての責任を果たしましょう。
5.疾病、疲労、その他の理由により安全な運転をし、又は補助することができない恐れがある、乗務員の乗務を禁止する業務
運行管理者は住民の健康状態を常に把握しておかなければいけません。
常に健康な状態で乗務できるように、健康診断等を通じて管理、監督する義務があります。
また、健康診断の結果によっては乗務員に自主的な管理を務めさせるほか、適宜、医師の診断を受けさせるように適切に指導を行わなければいけません。
そのためには、衛生管理者や産業医等と常に連絡体制を築いておいた方がいいでしょう。
6.長距離運転又は夜間運転の交替運転手の配置を管理する業務
次のような場合には、交替運転者の配置が必要です。
- 拘束時間が16時間を超える場合
- 運転時間が2日を平均して1日あたり9時間を超えれ場合
- 連続運転時間が4時間を超える場合
また、交替運転手の配置とは、1台の自動車に2人以上乗務させること、または交替箇所に予め待機させることを言います。
7.従業員に対する過積載防止の指導、監督をする業務
過積載が禁止されている理由は大きく分けて二つあります。
一つは事故の要因になること、もう一つは、交通公害の要因になることです。
そのため、過積載違反に対しては車両停止等の処分を受ける場合があります。
8.従業員に対する貨物の積載方法の指導、監督をする業務
積載制限のルールを遵守させなければいけません。
例えば道路交通法における積載物の長さ、幅、高さの制限は次の通りです。
- 長さ : 自動車の長さの1.1倍以下、かつ車体の前後から自動車の長さ10分の1の長さを超えてはみ出さないこと
- 幅 : 自動車の幅を超えないもので、車体の左右からはみ出さないこと
- 高さ : 地上から3.8m以下
また、貨物を分割することができず、積載制限を超えてしまう場合には、制限外積載許可を得る必要があります。
また、積載についての注意事項として、次のことが挙げられます。
- 次付け位置、重量配分に注意が必要です
- 偏った積み付けの場合、運転時に起こる現象に注意が必要です
- 荷崩れしないような固縛り方法を行ないます
- 積荷の長さが5m以上の場合は少なくとも前後と中間の三点を固縛りします
9.点呼の実施、報告、確認および指示ならびにその記録、記録を保存し、並びにアルコール検知器の使用と常時有効に保持する業務
- 点呼は対面で実施することが基本です。
- 点呼には乗務前、乗務後および乗務途中(中間点呼)があり、その内容が定められています
- 点呼時には安全確保に必要な指示を出すだけでなく、運転者に対し報告を求めます
- 酒気帯びの有無の確認はアルコール検知器を用いて確認しなければいけません
- 2泊3日以上の運行の場合、対面による点呼をおこなうことができない場合は、乗務の途中に少なくとも1回の点呼を行わなければなりません。
- 運行計画に変更が生じた場合、変更内容を運行指示書に記入し運転者に指示を行わなければなりません
また、点呼を行った際の報告や指示内容は運転者ごとに記録し、その記録は1年間保存しなければなりません。
10.運転者ごとに乗務記録をさせ、記録、保存する業務
乗務記録は1年間保管しなければならなりません。
記録する事項は次のようなものです。
- 運転手の氏名
- 乗務した自動車の登録番号、事業者が定めた車番または車号
- 乗務開始と終了の地点及び日時並びに主な経過地点並びに乗務した距離
- 運転を交代した場合におけるその地点およびその交代に日時
- 休憩または仮眠をした時点およびその開始終了の日時
- 車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の事業用自動車に乗務した場合は、貨物の積載状況
- 交通事故、または著しい運行の遅延その他の異常な状態が発生した場合は、その概要及び原因
- 運行の途中において運行指示書の携行が必要な乗務を行うことになった場合には、その指示内容
11.運行記録計の管理及び記録、保存する業務
運行記録計とは、運行中の行動を自動的に記録する記録用紙やメモリカードのことです。
運行記録計の装着を義務づけられている車両は、次のとおりです。
- 車両総重量7トン以上、または最大積載量4トン以上普通自動車である事業用自動車
- 車両総重量7トン以上、または最大積載量4トン以上の被牽引自動車を牽引する牽引自動車
- 特別積合せ貨物運送に係る運行系統に配置する事業用自動車
記録内容は、瞬間速度、運行距離、運行時間、です。
記録されたデータは1年間保存しなくてはいけません。
12.運行記録計による記録不能、車の運転禁止を管理する業務
運行記録計を装着する義務のある車両で、運行記録計による記録ができない車両を運行させてはいけません。
運行記録計による記録が正確に得られるよう、適切な整備および管理を行わなければなりません。
13.事故の記録と保存をする業務
事故発生後30日以内に事故の記録を作成しなければなりません。
保存期間は事故発生後3年間です。
記録の内容は次のようなものです
- 乗務員の氏名
- 事業用自動車の登録番号等
- 事故の発生日時及び場所
- 乗務員以外の事故の当事者の氏名
- 損害の程度を含んだ、事故の概要
- 事故の原因
- 再発防止策
14.運行指示書の作成、運転者の携行、変更内容の指示、記載、運行指示書等の保存をする業務
運行指示書には次の事柄を記載しなければなりません。
- 運行開始、終了の地点と日時
- 乗務員氏名
- 運行経路と主な経過地における発車、到着日時
- 運行に関して注意を要する箇所の位置
- 休憩地、休憩時間
- 業務の交換地点
- その他運航の安全を確保するために必要な事項
運転者には、この運行指示書に従って運行してもらいます。変更が生じた場合には変更内容を指示し、その内容を運行指示書に記載させ、その内容に従って運行してもらいます。
15.運転者台帳作成し、運転者の所属営業所に備える業務
運転者ごとに写真を貼り付けた一定の様式の運転者台帳を作成し、運転者の所属する営業所に備え付けなければいけません。
記載する事項は次の通りです。
- 作成番号および作成年月日
- 事業者の氏名又は名称
- 運転者の氏名、生年月日及び住所
- 雇い入れの年月日及び運転者に専任された年月日
- 運転免許証の情報
- 事故を起こした場合等の概要
- 運転者の健康状態
- 運転者に対する指導の実施及び適性診断の受診の状況
- 運転者台帳の作成前6ヶ月以内に撮影した写真
16.乗務員の指導監督及び運転者の特別な指導記録をする業務(3年間保存)
特別な指導というのは、次のような方に対しての場合です。
- 死者または負傷者が生じた事故を引き起こしたもの
- 運転者として新たに雇い入れたもの
- 65歳以上の高齢者
17.運転者に適性診断を受けさせる業務
上記16の特別な指導を受けさせた場合は、国土交通大臣が認定する適正診断を受けさせなければなりません。
18.異常気象時等の乗員へ指示し、措置をとる業務
天災、異常気象および土砂崩れ等による路線障害などにより、輸送の安全を確保に支障が生ずる恐れがある時は、状況を的確に把握し、乗員に対して伝達、運行中止、迂回、徐行運転、待機所の指定等を適切に指示しなければなりません。
情報収集を迅速にかつ的確に行うために、情報収集体制の整備をしておかなければいけません。
また、地震発生時には緊急地震速報が発令されますが、場所によっては、情報が発信されてから大きな揺れが到達するまで、時間がかかる場合があります。
乗員に対して緊急地震速報を受信した時の避難行動等を十分に徹底しておく必要があります。
19.補助者に対する指導及び監督する業務
運行管理者は、人材育成にも励まなければなりません。
事業の継続的な運営のためにも次の人材のことを考えておきましょう。
運行管理者の任務は多岐にわたります。
責任の重い立場ではありますが、安全運行のためには欠かせません。