この記事では、所有権の移転又は貸借をするために許可必要となる「農地」とはどういうものか、その定義について詳細を紹介します。
法律上は、「農地または採草放牧地の権利移動の制限」として規定されており、それらの所有権を移転、貸借権等の権利を設定する場合は、許可を受けなければならないとされています。
これらは、農地法第3条で規定されているため、一般的に3条許可と呼ばれています。
ここで規定されている「農地」と「採草放牧地」について、詳細を見ていきましょう。
農地
農地とは、法律上では、耕作の目的に供される土地、と定義されています。
耕作とは、土地に資本および労働を投じ、肥培管理を行って作物を栽培することを言います。
具体的に言うと、整地、耕うん、播種、灌がい、排水、施肥、農薬散布、除草等を行い、作物を栽培することです。
このようにして作物を栽培している土地が農地です。
そして耕作放棄地だとしても、いつでも耕作できると思われるものは、農地です。
また、栽培する作物に対する限定はあるのでしょうか。
これは特に食料かどうかに関わらないと考えられ、例えば落葉広葉樹の栽培や芝、竹などを栽培する土地も農地とみなされます。
ちょっと変わった例ですが、養鯉場として利用された水田も農地と判断されています。
これらに反して、農地ではないものとして挙げられるものは、家庭菜園として使われている土地です。
家庭菜園では肥培管理を行って、作物を栽培しているかもしれませんが、土地に資本を投じることはないでしょうし、栽培者が農家か、非農家かも重要な判断材料となっているようです。
採草放牧地
採草放牧地とは、農地以外で主に耕作又は養畜の事業のための採草、または家畜の放牧の目的に供されるものとされています。
したがって、耕作や養畜とは関係の無い場合には当てはまりません。
例えば、かやぶき屋根のための、かやの採草を行う土地は、農地法でいう採草放牧地には当たりません。
また耕作又は養畜のための採草放牧の事実があったとしても、河川敷や公園等で行われ、それぞれが主目的とは認められない場合は採草放牧地とは判断されません。
続いて、登記関連についてです。
土地の登記の地目との関係
土地が農地であるか、または採草放牧地であるかの判断は、耕作あるいは採草または放牧が実際に行われているかどうか、行なうことができるかどうか、という土地の現状に着目して判断されることになります。
このことから土地登記簿上の地目が農地ではなく、山林や原野などの場合であっても、現状が農地又は採草放牧地として利用されていれば、農地と判断されます。
即ち、登記簿上の地目が農地ではなくても、所有権の移転等を行う場合は、許可が必要となる場合があります。
登記された内容よりも、現状を重んじるわけです。
それでは、その逆の場合はどうでしょうか。
土地登記簿の地目が農地で、実際が農地とは言えない場合です。
この場合、現状主義を採用して農地ではないと判断されることは、まずありません。
ですから、その土地の所有権を移転するような場合は、許可を受けなければならないということになります。
しかし、実際には、農地として利用してはいないので、農地法の手続きを回避することはできないか、と考えるかもしれません。
その場合には農地ではないということを認めてもらうための次のどちらかの手続きが必要になります。
- 非農地証明
- 遊休農地に関する措置
これらが認められた場合は、農地法による許可は不要になりますが、認められなかった場合は許可が必要です。
農地でなくなった理由が、無断転用である場合が結構見受けられ、その場合には上の二つの手続きにより、農地ではないということを認めてもらうことは非常に難しいようです。
その場合は素直に農地法の手続に従うしかありません。