この記事では、建設業許可要件の一つである専任技術者について、その詳細を紹介します。
建設業を営むために必要な要件の一つとして、専任技術者に関する要件があります。
全ての営業所に専任の技術者を置かなければならないというものです。
まず、専任というのはどういうものか考えてみましょう。
営業所への専任について
専任の者とは、その営業所に常勤して専らその職務に従事することを要する者をいう、と定義されています。
会社の社員の場合には、その人の勤務状況や給料の給与の支払い状況等により、専任か否かの判断が行われます。
具体的に専任として取扱われる判断基準としては、次のようなものが挙げられます。
- 勤務している営業所とその者の住んでいる自宅の住所との距離が著しく遠距離にあるわけではなく、常識的に通勤可能であると判断される場合
- 他の営業所や他の建設会社において、選任になっていないこと
- 他の法令により特定の事務所等において専任でなければならないとされている建築士事務所を管理する設計士や専任の宅地建物取引士等でないこと
- 他に個人営業などを行っていないこと
- 他の法人で専任に近い状態である常勤役員等でないこと
続いて、専任性のエビデンスとなりうる資料を見ていきましょう。
専任性の確認資料
専任性を確認するための資料としては、次のようなものが挙げられます。
- 通勤することができることの確認
→ 住民票等 - 給与の支給を受けていることに対する客観的なエビデンス
→ 健康保険被保険者証、厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書、等です。
会社や役員が作成できる資料ではなく、第3者が発行する資料のほうが、証拠能力が高いと判断されっるため、第3書が発行する資料を出来るだけ準備することが必要です。
技術「者」について
次に技術者についてみていきましょう。
専任の技術者は以下の要件を満たさなければいけません。
イ 許可を受けようとする建設業に係わる建設工事に関し、学校教育法による高等学校若しくは中等教育学校の指定学科卒業後5年以上または学校教育法による大学若しくは高等専門学校の指定学科卒業後3年以上の実務経験を有する者
ロ 許可を受けようとする建設業に係わる建設工事に関し10年以上実務経験を有する者
ハ 国土交通大臣が上記イまたはロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有する者と認定した者
これらを確認するための資料としては、次のようなものが挙げられます。
- 資格の確認
→ 資格証明書等 - 学科の確認
→ 卒業証明書等 - 実務経験の確認
→ 契約書、請求書、注文書等で工事内容が明記された工事実績を確認する書類等
実務経験として認められるのは毎月1件以上が目安です。
上記ロの経験というのは、建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいいます。
ただ単に建設工事の雑務のみの経験は含まれません。
含まれるのは設計技術者としての設計に従事した場合や、現場監督技術者として監督に従事した経験、または土木及びその見習いに従事した経験等です。
専任技術者制度の趣旨について
最後に、営業所に選任の技術者を置くという制度が設けられた趣旨についてみていきたいと思います。
建設工事を請け負うに際して、適正な契約の締結および適正な工事の履行を担保するため、建設業、建設工事に関する専門的な知識が必要であることは言うまでもありません。
また、契約行為等は、各営業所単位で行われることが前提ですから、各営業所に専門的知識を有する者が必要であり、その者が専任の技術者として配置されなければならないということになります。
これが、専任技術者を配置する必要性であり、専任技術者制度の趣旨であると言えるでしょう。