この記事では、建設業許可を受けるための四つの要件について、その詳細を紹介しいます。
建設業許可を受けるための要件については、法律で次のような四つの項目が規定されています。
- 役員のうち1人が許可を受けようとする建設業に関心5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること。
- 営業所ごとに専任の技術者を配置すること。
- 請負契約に関して不正または不誠実な行為をする恐れが明らかなものでないこと。
- 財産的基礎または金銭的信用を有していること。
それでは、順番に内容を見ていきましょう。
経営業務の管理責任者がいること
この基準の目的は建設業における適正な経営を確保することですが、特に建設業においては、一品ごとの受注金額、契約金額が大変高額であり、建築物の引渡し後に置いても長期間のかし担保責任を負うという、他の産業とは異なる産業特性を有するため、特別に重要視されていると考えられます。
それでは、具体的に経営業務の管理責任者とはどういうものを言うのか確認していきましょう。
建設業法第7条第1項では、次のように規定されています。
一 法人である場合においては、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずるものをいう、以下同じ)のうち常勤である者のひとりが、個人である場合においては、そのもの又はその支配人のうち1人が次のいずれかに該当する者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に関し、5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者。
ロ 国土交通大臣がイにあげるものと同等以上の能力を有する者と認定したもの。
上の条文の具体的な解釈として国から「建設業許可事務ガイドライン」が出されています。
そのガイドラインをかみくだいて説明すると次のような感じになります。
b)許可を受けようとする建設業と違った建設業の6年以上の経営経験
上記aとbにおいて、基本的にbの場合は6年以上の経営経験が必要になります。
aの場合は基本的に経営経験の必要年数が5年以上ですが、条文にある「準ずる地位」の場合で経営業務を「補佐」した経験を有する場合には6年以上の経験が必要になります。
もう少し詳しく見てみますと、法人における役員の中で
- 業務を執行する役員とは、持分会社の業務を執行する役員
- 取締役とは、株式会社の取締役
- 執行役とは、指名委員会等設置会社の執行役
のことをそれぞれ言います。
これらに準ずる者とは法人格のある各種組合等の理事等をいい、執行役員、監査役、会計参与、監事及び事務局長等は原則として含まないが、業務を執行する社員、取締役又は執行役に準ずる地位にあって、許可を受けようとする建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会または代表取締役から具体的な権限委譲を受けた執行役員等については含まれるものとする、と規定されています。
ちょっとややこしいですね。
また、補佐経験については6年以上の経験が必要ですが、許可を受けようとする建設業に関する補佐期間とそれ以外の建設業に関する執行役員としての経営管理経験の期間が通算6年以上である場合も認められます。
補佐3年と役員3年の経験があればいいわけです。
加えて、法人と個人における経験期間も通算6年以上であればOKです。
最後に、許可を受けようとする建設業以外の建設業に関する6年以上の経験については、単一の業種で6年以上の経験が必要というわけではなく、複数の業種区分にわたるものであっても良いものとされています。
専任技術者が営業所ごとにいること
この要件の目的は建設工事に関する請負契約の適正な締結履行を確保するためです。
この目的を果たすために、建設工事についての専門知識を有する技術者が常に指導することで建設業の営業が行われる体制を取らなければなりません。
つまり、各営業所に許可を受けようとする建設業に関する資格や経験を有する者を専任で配置することになります。
ここで、専任とは、その営業所に常勤して、その職務に従事することを言います。
そのため、専任技術者は営業所の常勤している職員の中から選ばなければなりません。
あとで詳しく述べる機会があると思いますが、工事現場にも主任技術者を置く必要があります。
営業所の専任技術者が工事現場の主任技術者を兼ねることもできますが、そのためには満たさなければいけない、以下のような基準があります。
- 専任技術者が配置されている営業所において、請負契約が締結された建設工事であること
- 営業所と工事現場が距離的に近く、営業所との間で常時連絡を取り得る体制にあること
- 請け負った建設工事が主任技術者等の工事現場への選任を要する工事でないこと
次に専任技術者となり得る資格要件についてですが、許可を受けようとする建設業が一般建設業であるか、特定建設業であるか、またその業種により必要となる技術資格要件の内容が異なりますので注意が必要です。
資格要件の詳細については、別の機会に説明しますが、ここでは一般建設業の営業所専任技術者となり得る技術資格要件について簡単に取り上げてみます。
以下のような要件が規定されており、いずれかを満たす必要があります。
- 一定の国家資格などを有する者
- 一定期間以上の実務経験を有する者
- 海外での実務経験を有するもので、国から認定を受けたもの
国家資格については、数十もの資格が建設業の業種と紐付けられており、非常に複雑になっています。
必要な資格についての情報は、専門家に確認する方が無難です。
執務経験についても学歴、学科などで必要な期間が異なりますので注意が必要です。
また複数の業種に関わる実務経験を有している場合などの規定も細かく決められているので注意が必要です。
許可申請前に専門家確認を取った方がいいでしょう。
誠実性があること
建設業は信用第一です。
基本的に建設工事は注文生産であり、契約から完成までには非常に長い時間がかかり、また金額は極めて高額であることから、建設工事の契約は建設業者の信用を前提として行われることになるからです。
今日の契約の締結やその履行について不正や、不誠実な行為をするようなものについては建設業界から排除するためにこのような基準が設けられていると考えられます。
この基準の対象者は申請者が法人である場合には、その法人、その非常勤役員を含む役員、支配人及び営業所の代表が該当します。
申請者が個人である場合は、その本人、支配人および営業所の代表者が該当します。
不正または不誠実な行為とは建築士法や宅地建物取引業法などに規定されている行為で、それらの不正または不誠実な行為を行ったことにより免許の取り消し処分を受け、その最終処分から5年経過しない者である場合は、この基準を満たさないものとして取り扱われることになります。
財産的基礎、金銭的信用
この規定により許可を受けるべき建設業者としての最低限度の経済的な水準が求められます。
建設業においては、工事を始める前に資材の購入や工事着工のため、高額の準備費用が必要となるのは当然のことです。
どのようにしてそれを証明するかですが、一般建設業の許可を受ける場合には次のいずれかに該当することが必要です。
- 自己資本の額が100万円以上であること
- 500万円以上の資金を調達する能力を有すること
- 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業をした実績を有すること
特定建設業の許可を受ける場合は、次の全てに該当することが必要です。
- 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
- 流動比率が75%以上であること
- 資本金の額が2000万円以上であり、かつ自己資本の額が4000万円以上であること
上記のことを、既存の企業にあっては、申請時の直前の決算期における財務諸表において、また新規に設立された企業においては、創業時における財務諸表において示す必要があります。
最後に言葉の定義を少し説明しておきます。
自己資本とは、法人の場合、貸借対照表における純資産合計額を言います。
個人の場合は期首資本金、事業主仮勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額をいいます。
欠損の額とは法人の場合、貸借対照表の繰越利益剰余金が負である場合にその額が資本剰余金、利益準備金及びその他の利益剰余金の合計額を上回る額を言います。
個人の場合は、事業主損失が事業主借勘定の額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額を上回る額をいいます。
ちょっとややこしいですね。
不安な場合は、専門家に確認した方がいいと思います。