この記事では、NPO法人設立申請に必要な定款の作成方法を紹介します。
NPO設立申請時に提出しなければならない書類は次の11種類です。
この記事では、2の定款について紹介します。
- 設立認証申請書
- 定款 2部
- 役員名簿 2部
- 役員の制約及び就任承諾に関する書面の謄本
- 役員の住所又は居所を証する書面
- 社員のうち10人以上の者の名簿
- 確認書
- 設立趣旨書 2部
- 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
- 事業計画書(設立当初の事業年度及び翌事業年度)2部
- 活動予算書(設立当初の事業年度及び翌事業年度)2部
(2部と書かれているのは2部提出が求められているものです)
定款は様式が定められているものではありません。
ただし、法律で必要な記載事項は定められているので、それを留意する必要があります。
定款に必要な内容は次の14項目です。
- 目的
- 名称
- 特定非営利活動の種類及び該当特定非営利活動に係る事業の種類
- 主たる事務所及びその他の事務所の所在地
- 社員の資格の得喪に関する事項
- 役員に関する事項
- 会議に関する事故
- 資産に関する事項
- 会計に関する事項
- 事業年度
- その他の事業を行う場合には、その種類その他当該その他の事業に関する事項
- 解散に関する事項
- 定款の変更に関する事項
- 広告の方法
そもそも定款とはどういうものでしょうか。
聞きなれないという人もいるかもしれません。
定款とは、法人を運営するための根本規定で、法人内の最高法規ともいえるものです。
また、同時にその法人の目的は何か、どのような事業を行うのか、意思決定は誰が行うのか、など対外的に明らかにするものでもあります。
非常に大切なものであり、NPO法人設立申請の添付書類の中でも最も重要なものであると言えます。
それでは、定款の書き方について順番に紹介していきましょう。
1.目的
どのような人達を対象に、どのような活動を行い、それが社会にどのように効果をもたらすのか、内容を分かりやすく記載します。
例えば次のようなものです。
「この法人は、〇〇に対して、〇〇に関する事業を行い、〇〇に寄与することを目的とする」
2.名称
ここは自分の好きな名前を付けていい訳ですが、使えない言葉もあります。
例えば、内閣とか、広島県のような国や地方自治体と誤認されるような言葉を使用できません。
また、財団法人、銀行、小学校など他の法律により使用を制限される言葉があり、これらは使用できません。
3.特定非営利活動の種類及び該当特定非営利活動に係る事業の種類
19種類の分野のどの分野に該当するかを選んで記載します。
いくつ選んでもかまいませんが、1の目的に合致する内容が好ましいので、ある程度限定した方がいいんでしょう。
あまり多く選びすぎると何をやりたい団体なのかわかりにくくなりますから。
4.主たる事務所及びその他の事務所の所在地
従たる事務所がある時には主たる事務所と明確に区別をした上で設置する事務所の住所を全て記載します。
住所の記載方法は所在地の最小行政区画まででよく、それ以下の住所は任意的記載事項です。
最低限、例えば「福山市」までの記載でよいということです。
5.社員の資格の得喪に関する事項
ここで記載すべきことは次の7つです。
社員の種類
会員もといいます。
正会員、準会員、賛助会員等が一般的です。
その他、名称はボランティア会員とか協力会員などが考えられます。
正会員が社員(総会で評決権を持つ会員)であることを明確にします。
入会するための条件
社員(正会員)の資格の取得については不当な条件を付すことはできません。
社員以外の会員の入会については、任意の条件を定めることができます。
入会金及び会費
設立総会で金額を決定し、記載します。
入会金、会費を徴収しない場合は、記載する必要はありません。
会員の資格の喪失
資格を喪失する条件を記載します。
例えば次のようなものです
- 退会届を提出したとき
- 本人が死亡した時
- 本団体が消滅した時
- 継続して〇年以上会費を滞納した時
退会について
退会が任意であることを明確にしますます。
任意に退会できないというのは違法です。
除名について
総会の議決により、除名できる時の条件を記載します。
例えば次のような場合です。
- 定款等に違反したとき
- 法人の名誉を傷つけ、又は目的に反する行為をしたとき
拠出金品の不返還
既に納められた入会金や会費等は返還しない旨を記載します。
6.役員に関する事項
役員については次の7つの項目を記載します。
役員の種類と定数
理事の定数は3人以上、監事の定数は1人以上としなければなりません。
上限と下限を設けても構いません。
職名は理事、幹事だけでなく、理事長、副理事長または他の名称を使用しても構いません。
例えば代表理事、会長、専務理事、常務理事などです。
選任方法
選任方法を記載します。
例えば、理事及び幹事は総会において選任する、理事長および副理事長は理事の互選とする、等です。
職務について
法人の代表者が誰かを明確に記載します。
例えば次のようなものです。
- 理事長が、この法人を代表する。
- 理事全員は、この法人を代表する。
- 理事長及び常務理事は、この法人を代表する。
また、代表が事故等でかけた時には誰が代行するか記載します。
理事の職務を記載します。
- 理事は理事会を構成し、この定款の定め及び理事会の議決に基づき、この法人の業務を執行する。
監事の職務を記載します。
- 理事の業務執行の状況を監査すること。
- 法人の財産の状況を監査すること。
- 法令や定款に違反する重大な事実があることを発見した場合にはこれを総会、又は所轄庁に報告すること。
- 理事に意見を述べ、若しくは理事会の招集を請求すること。
任期
役員の任期を規定します。最大2年です。
再任させるかどうかは自由です。
欠員の補充について
役員が欠員した場合の補充する基準を記載します。
例えば、理事または監事のうち、その定数の3分の一を超えるものが欠けたときは遅滞なくこれを補充しなければならない。
解任について
解任するための条件を記載します。
報酬について
役員はその総数の3分の1以下の範囲で報酬を受け取ることができることを記載します。
つまり10人いれば3人までしか役員としての報酬を受け取ることはできません。
7.会議に関する事項
総会に関わる事項10項目と理事会にかかわる事項8項目を記載します。
総会
- 種別
例えば、総会には通常総会と臨時総会の2種類あることを記載します。 - 構成
総会の構成員は社員です。正会員が特定非営利活動法人の社員として位置付けられている場合は、正会をもって構成する、と記載します。 - 機能
総会において議決する事項を記載します。- 定款の変更
- 解散
- 合併
- 事業計画及び活動予算、並びにその変更
- 事業報告及び活動決算
- 役員の選任又は解任、職務及び報酬
- 入会金及び会費の額
- 借入金その他、新たな義務の負担及び権利の放棄
- 事務局の組織及び運営
- その他、運営に関する重要事項
- 開催
いつどのような場合に開催するか、記載します。
例えば次のようなものです。- 通常総会は毎年2回開催する。
- 臨時総会は、理事会が必要と認め、招集の請求をした時
- 正会員総数の5分の一以上が会議の目的である事項を記載した書面をもって招集の請求があった時に開催する。
なお、通常総会は少なくとも年に1度は開催しなければいけません。
- 招集
誰がどのように招集するか、記載します。
基本的に理事長が招集します。
ただし、正会員や理事から請求があった時は、請求の時から何日以内に招集するかを記載します。
招集する時は日時、場所、目的及び審議事項を記載した書面をもって、招集することおよび、少なくとも何日前までに招集しなければならないかを記載しておきます。 - 議長
誰を議長として選出するか、またはその方法を記載します。
例えば次のようなものです。
総会の議長はその総会において出席した正会員の中から選出する。 - 定足数
総会が成立する出席者数について記載します。
例えば次のようなものです。
総会は正会員総数の2分の1日以上の出席がなければ開会することができない。 - 議決
どのようにして議決をとるかを記載します。
例えば、過半数の賛成、同数の時は議長な決定に従う等。 - 表決権等
1票の重さについて記載します。
各正会員の評決権は平等であること、やむを得ない理由ため、出席できない場合はあらかじめ書面をもって表決することができる、または他の正会員に評決を委任することができる等を記載します。 - 議事録
議事録を作成しなければならない旨および次のような記載事項を記します。- 日時及び場所
- 正会員の総数及び出席者数
- 審議事項
- 議事の経過の概要及び議決の結果
- 議事録署名人の選任に関する時効
理事会
- 構成
理事会は理事をもって構成する旨を記載します。 - 機能
理事会にて議決する事項を記載します。- 総会に付議すべき事項
- 総会の議決した事項の執行に関する事項
- その他、総会の議決を要しない、会務の執行に関する事項
- 開催
理事会をどのような場合に開催するかを記載します。
例えば次のようなものです。- 理事長が必要と認めた時
- 理事総数の〇分の〇以上が書面をもって招集の請求があった時
- 監事から招集請求があったとき
- 招集
理事長が招集する旨、招集方法を記載します。
例えば、少なくとも〇日前までに通知し、請求があった時は、〇日以内に招集しなければならない旨記載します。 - 議長
議長は理事長であることを記載します。 - 議決
過半数で議決する、同数の時は議長の決するところによること等を記載します。 - 表決権等
表決権は各理事で平等なものであること、またやむを得ない理由のため出席できない理事はあらかじめ書面をもって表決できること等を記載します。 - 議事録
議事録を作成しなければならない旨および必要な記載事項を記します。- 日時及び場所
- 理事総数、出席者数及び出席者氏名
- 審議事項
- 理事の経過の概要及び議決の結果
- 議事録署名人の選任に関する事項
8.資産に関する事項
次の3項目について記載します。
- 資産の構成
法人の資産は次のようなもので構成されることを記載します。- 設立当初の財産目録に記載された資産
- 入会金及び会費
- 寄付金品
- 財産から生じる利益
- 事業に伴う収益
- その他の収益
- 資産の区分
NPO法人の活動が特定非営利活動の他にその他の活動を行う場合と行わない場合で記載の仕方が変わります。
例えばその他の活動を行なう場合は次のように記載します。
この法人の資産は特定非営利活動に係る事業に関する資産及びその他の事業に関する資産の2種とする。
その他の活動がない場合には、資産の種類は1種のみになります。 - 資産の管理
資産の管理方法について記載します。
例えば次のようなものです。
この法人の室温は理事長が管理し、その方法は総会が議決を経て理事長が別に定める。
9.会計に関する事項
この法人の会計は、法律に規定されている原則に従って行うものとする旨を記載します。
法律に規定されている会計の原則とは、次のようなものです。
特定非営利活動促進法第二十七条
一 会計簿は正規の簿記の原則に従って正しく記帳すること。
二 計算書類および財産目録は、会計簿に基づいて活動に係る事業の実績及び財政状態に関する真実な内容を明確に表示したものとすること。
三 採用する会計処理の基準及び手続きについては、毎事業場年度継続して適用し、みだりにこれを変更しないこと。
また、会計の区分として特定非営利活動に係る事業に関する会計とその他の事業に関する会計の2種類を区別する旨を記載します。
10.事業年度
事業年度の開始日および終了日を記載します。
特に規定はないので、自由に決めることができます。
ただし、行政年度と同じく4月1日に始まり、翌年3月31日に終わるとする法人が最も多いようです。
11.その他の事業を行う場合には、その種類その他当該その他の事業に関する事項
その他の事業を行う場合には、その内容を記載します。
その他の事業とは、例えば関連グッズの販売などが考えられます。
12.解散に関する事項
解散がどのような手続きで行なわれるか記載します。
例えば次のようなものです。
この法人は次に掲げる事由により解散する。
- 総会の決議
- 目的とする特定非営利活動に係る事業の成功の不能
- 合併
- 破産手続き開始の決定
- 所轄庁による設立の認証の取り消し
などです。
13.定款の変更に関する事項
法律で定められた定款変更の議決の必要数は社員総数の2分の1以上が出席し、出席した社員の4分の3以上です。
上記の範囲内で条件を変更して記載することはできます。
14.公告の方法
公告の方法は次の中から選びます。
- 官報に掲載
- 日刊新聞紙に掲載
- 法人のホームページに掲載
- 内閣府NPOポータルサイトに掲載
- この法人の主たる事務所の掲示場に掲示
その他、附則として次の事柄を記載しておくと良いでしょう。
- 役員の役職及び氏名
- 設立当初の入会金および会費の金額
などです。